高卒就職の一人一社制は約60年前より始まり、現時点でまだ採用されている制度です。
これまで長く続けられてきた歴史を持つ高卒の1人1社制。
企業サイド、学校サイド、そして高校生。
それぞれ意見はあると思いますが、どんなメリット・デメリットがあるのか、またなぜ制度が続き、今見直しがされているのか、まとめてみました。
一人一社制のメリット・デメリットってなに?
1人一社制には、それぞれ次のようなメリット・デメリットが挙げられます。
メリット
まずは企業側のメリットです。
1人一社制の場合、企業側は学校側への求人票提示のみで済みます。
つまり、広告媒体への掲載や人材派遣会社の利用といったコスト削減が可能となります。
また一人一社では、応募者は基本的に辞退ができません。
そのため、採用計画が立てやすい利点があります。
続いて学校側・学生側のメリットです。
本来就職活動は、それなりに時間がかかるものです。
しかし、1人一社制があることで、学校・生徒側では就職活動にかかる時間が大幅に削減することが出来ます。
ここで生み出された時間は、学生本来の仕事である学業に投資することができます。
つまり、高校生が就職の道を選ぶにしても、学業優先の環境づくりがし易いといった利点があるのです。
デメリット
まずは企業側のデメリットです。
1人1人一社で採用するのは、まだ社会経験の少ない高校生です。
そのため、社会経験の浅い人材に対して、様々な教育を施す必要があります。
必要なことではありますが、新卒の採用よりも費用面や人的なコスト負担が生じることがデメリットして挙げられます。
メリットがあることはもちろんですが、
良き人材育成のためにはコストがかかる点は承知しています。
続いて学校側のデメリットです。
学校側では生徒のことを考え多数の求人票の中から就職先となる会社を選びます。
この企業選定には、当然ですが時間と手間がかかります。
生徒のためではありますが挙げるとしたら、この手間の部分だということができます。
また生徒側から見れば、学校側によって就職先の推奨があるため、他の企業に応募しにくい状態でもあります。
つまり、ある程度学校に敷かれたレールを歩まねばならないことがデメリットでしょう。
どうしても行きたい会社があれば、その意思を伝える必要がありますが、学校側とよく相談する必要があるので、しっかりと意見を持っておいた方が良いです。
さて、ここまでで1人一社制のメリット・デメリットの代表的なものを挙げました。(細かいところを突き詰めれば様々ありますが)
ではなぜ一人一社制が制度として採用されていたのでしょうか?
一人一社制はなぜある?高校生の就職活動に有効的な制度なのか
一人一社制の制度ができたのは、敗戦後の日本が劇的な復活を遂げた1950年台の高度経済成長期頃のことです。
- 今後の日本を支える人材を作るために学業を優先させたい文部科学省。
- 学生の不正採用を減らしたい厚生労働省。
- 人材確保を急ぐ企業、就職先を確保したい学校。
制度が生まれるまでには各機関での思惑があり、これらを公正にするために生まれた制度なんです。
制度化されて以降長年、国・企業・学校・生徒の相互の利害の調整弁として機能してきました。
この一面があることは否定できません。
う~む。厳しく言えば、大人の都合のようにも聞こえるが…。
もちろん生徒側にも有効な点があります。
生徒側では学業も疎かにできず、時間や情報にも限りがあります。
そんな中、確実に卒業後の進路が約束されることで、学業に集中できるという点は大きな安心感となりました。
時代の変化が1人一社制を見直すきっかけに?
この20年、インターネットの普及で家にいながら様々な情報が簡単に誰でも入手ができるようになりました。
役に立つ情報から眉唾な情報まで、いやがおうにも耳や目に入ってくる時代。
この現代では、本当に大事なものを自らの目で見極めることが益々重要視されている流れがあります。
もちろん、それは高校生も同じです。
卒業後の進路についても「基本としては自らの意思に基づいて選択、決定をするべきではないか」という見解が現れました。
この流れによって、この制度の有効性に対する疑問の声も徐々に出始めてきています。
高卒の一人一社制の見直し案が出現!その理由とは?
- 「基本としては自らの意思に基づいて選択、決定をするべきではないか」
- 「制度に有効性があるのか」
このような疑問の声が生まれたことによって「一人一社制、見直すべき」という風潮も高まっています。
では、なぜ長年高校生の就職を支えてきた一人一社制に対して、有効性に疑問の声が生まれたのでしょうか。
それは就職後の離職率の高さが現実問題としてあることが1つの理由としていわれています。
高校生の就職活動と大学生の就職活動の差
大学生の就職活動では、複数社のセミナーを受けたり、先輩からの話を聞いたりといった活動を経て自らの意思が第一で入社先を決めていきます。
大学では高年次となるにつれ、授業数も減り就職活動に割ける時間も増えます。
だからこそ、大学生は自分で判断したり調査したり、意思を固めることができる就職活動の方法をとることができます。
しかし高校では学業優先。
様々な企業を見学したり、話を聞いたりという時間を割くことが非常に困難と言えます。
その困難さがあるからこそ、学校側が仲介し求人と生徒をマッチングを行います。
ただ、企業・生徒相互の利害を一致させる制度ではあるはずですが、実は互いをよく知らずに進んでしまうことケースもあることからミスマッチも生じやすいことも少なからずあるのです。
情報が普及した現代における高卒の就職活動の可能性
その中、この20年でインターネットが爆発的に普及しました。
誰しもが様々な情報に触れることが可能となった時代です。
テレビ・ラジオくらいしかタイムリーな話題に触れることが出来なかった当時と比べれば、社会環境が大きく変化しています。
現実として、使える情報もあれば、信用できない情報も当然あります。
しかし、自らで情報収集を行い触れ、感じた中で自分にマッチするものを選択していくことが出来る時代になっています。
このように時代の中、環境の大きな変化があるにもかかわらず、いまだに一社の企業にしか接触ができないという制度は見直すべきという声があがるのも無理はないでしょう。
まとめ
物事は表裏一体、メリット・デメリット両方が存在しています。
時代にそぐわないという点だけではなく、実際には、生徒のためになっている点もあるのは否定できません。
しかし就職というのは、軽いものではないです。
学校以上に長い時間を過ごす場所に入る、ということでもあります。
高校生とはいえ、分別のつく年齢とみることもできます。
今後の進路を自分の意思で決めていくことが最も大事な「自立」に結びつくのではないか、と考えさせられる制度ですね。