アマミノクロウサギは2021年7月、正式に世界自然遺産への登録がされる見通しとなった「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の奄美大島、徳之島に生息する固有種であり、絶滅危惧IB類に指定されている生物です。
「生きた化石」とも呼ばれるアマミノクロウサギ。
なぜ絶滅危惧種となってしまったのでしょうか?
現在、奄美自然体験活動推進協議会・環境省奄美野生生物保護センターが制作した資料では4つのことを原因として挙げています。
ほかにも様々な情報を一通り読んでみましたが、人々の生活とも深く関わっている部分でかなり頭を抱える問題だなぁという印象でした…。
アマミノクロウサギ絶滅危惧原因その1:森林伐採
アマミノクロウサギが絶滅危惧種となった原因の1つめは森林伐採です。
アマミノクロウサギは夜行性の生物なので、休息にあたるお昼の時間帯は巣穴で休んでいます。樹洞や岩穴の他大木の根元などに、穴を掘り休息や子育ても行っているので森林は、言ってしまえば住処です。つまり、森林を伐採することで、アマミノクロウサギたちのお家を取り壊してしまう・住む場所を失くしてしまうことになってしまうのです。
アマミノクロウサギの生活を考えれば、森林伐採は当然しない方が住みやすいでしょう。しかし、奄美大島、徳之島には人々も住んでいます。どうしたって人が生活する上では樹木の伐採は必要性が出てきてしまうのです。
この問題を解決するのは簡単ではなさそうですが、木を切る際にゴッソリときってしまうのではなく、アマミノクロウサギを含むそのエリアに住む動物・生物のことを考えていく必要がありそうです。
原因その2:マングースはハブを食べていなかった?!
2つめです。
1979年、赤崎公園(名瀬)にてハブ退治の目的で約30頭のマングースが放たれました。放たれたマングースはみるみる内にその個体数を増やしました。その数1万頭以上にまで増えたことも。
では、マングースが順調にハブを退治しその数を減らせたのか?
現実はそうではなかったのです。
ハブの数は減らず、アマミノクロウサギが減っていってしまったのです。
その理由は、マングースがアマミノクロウサギを捕食してしまっていたからだったんです。
というのも、マングースは昼間に活動する昼行性、ハブは夜間に行動する夜行性の特徴があることから2種の出会うタイミングがマッチしていないこと、のっそのっそとした印象を受けることから俊敏ではないこと、またマングースはアマミノクロウサギの巣穴に入ってしまうケースがあることなどの理由から、マングースはハブよりもアマミノクロウサギを狩ってしまう結果になってしまっていたんですね。
原因その3:人間に飼われていた犬や猫が野生化
3つめです。
ペットとして、あるいは狩猟として人に飼われていた犬や猫が野生化し、アマミノクロウサギを襲ってしまうケースです。
野に放たれた犬や猫は、ノイヌ・ノネコと呼ばれます。
野生の生態系として加わってしまったノイヌ・ノネコは、かつて主から食事を用意されることは当然なくなり、生きるためには餌を探さなくてはなりません。
そこで餌のターゲットの1つとなってしまったのがアマミノクロウサギでした。
ペットを飼えなくなったからといって、むやみに野生に放ってしまうのは、放たれたペットも大変ですし、それだけではなく、このケースのように地域特有の生態系に影響を与えてしあうこともあります。その結果、固有種がなくなってしまうことも少なくないのです。
原因その4:交通事故
4つめです。それは交通事故です。
良し悪しはここで考えることではないので、事実のみを見ていくと、どんな場所でもその土地に住んでいる人々にも生活があるわけで、時代の流れとともに車の往来も増えていきます。アマミノクロウサギが生息する地域もしかり。
その結果、交通量が増え、スピードを出し過ぎ車やわき見運転者なども現れるようになります。とくに国道や県道では、スピードも出やすいことから交通事故が発生しやすいそうです。
こういった影響により、アマミノクロウサギとの交通事故も増えてしまい、その数を減らすことに繋がってしまっているのです。
まとめ
今回調べていくうちに、心苦しいですが、人々は意図せずアマミノクロウサギの個体数減少の手助けをしてしまっているような感覚を受けました。
マングースはそもそも人々の計画により連れてこられたにも関わらず、駆除される結果になってしまっていますし、ペットの野生化も人々が原因であることも少なくないはず。交通事故に至っては、どうしたって人の手であることを認めざるを得ません。
とても難しい問題となっていますが、過去を見つめ直し今後の在り方を考えつつ、今出来ることを1つ1つクリアにしていくことが種の保存の近道なのかもしれません。